社団法人 埼玉建築士会 大里支部 本文へジャンプ
~みどりの風吹く街づくり事業~

 私たち建築士は「器」を創るだけではなく、住まう人の生活やそれをはぐくむ地域までも創造できる仕事だと思います。この暑い熊谷から心地よい緑の風を吹かせましょう。
 この事業は、熊谷市と(社)埼玉建築士会大里支部が協働で行う緑化推進プログラムです。東京都公園協会と共に「まちなか緑化」を進めてきた(株)チームネットの甲斐哲郎氏、エービーデザイン(株)正木覚氏の協力を得て、緑から得られる快適な暮らしを自分の家から始め、地域へと広がり、コミュニティーへと発展するという大きな希望に満ちた、小さな一歩の事業です。

平成26年度 



 景観提案事業「緑の風吹くまちづくり」活動では、4年をかけ、モデル地区の植樹からはじめ、熊谷の中心市街地にある星川沿いの「まちなか緑化」実施をとおして完成形となりました。
 はじめは、日本一暑い熊谷の暑さのしくみを、一人ひとりが理解し緑の力の気づくことからスタートし、何回ものブレーンストーミングやワークショップを行いながら、皆で緑化のイメージを共有し計画を作成してきました。具体的にはモデル地区の植樹を行い、最終年度の平成26年度は熊谷市の中心市街地である星川通り周辺の緑化に取り組みました。そして、今では、個人住宅やお店の前といったスポットから通り一帯へと、点から線へ進みつつあると感じています。

星川通り沿いの緑化
 星川は、熊谷市内の中心市街地に位置し、1623年、荒川の氾濫でできた星渓園の「玉の池」伏流水で出来た川です。水がことのほか清く、染物を洗ったり、子供達が水遊びをしていました。昭和20年8月14日に熊谷は空襲を受けて、星川でも多くの犠牲者がでました。戦後、市では熊谷の玄関としてふさわしい顔づくり、文化の香り漂う市民のオアシスとして、市街地の中央を流れる星川を「星川シンボルロード」として整備、現在は名実ともに熊谷の「顔」になっています。
 そんな星川に、上流から駅前までの7か所の広場で水辺を眺めながら緑の涼しさと安らぎを感じられる空間が誕生しました。
水と緑に囲まれた街並みをたのしみながら散策し、涼を求め水辺で遊び、くつろぎと憩いの空間を創りあげる事で、子供も大人も地域の方々からも愛される『集いの場』です。
 地域のお店や市民が一緒になって商店や住宅への植樹を行い、緑化とともにパーゴラやプランター、ベンチ等の製作・設置を行いました。
 作品には建築士としての職能を活かした地域委員会のメンバーの情熱と試行錯誤のデザイン計画が光っていると自負していますが、数多くの皆様のご協力・ご支援で進めることができたことを忘れてはなりません。資金の多くは県の補助金で賄っています(埼玉県わが街緑化支援事業)。植樹後の水やり等のお世話をしていただける地元商店街、住民との折衝は熊谷市商業観光課のご担当者に協力いただき、植栽パーゴラやベンチは熊谷工業高校建築科の生徒さんの力作です。

 「まちなか緑化」活動は、通りの景観を美しくすることによる環境整備に貢献するばかりでなく、親しみや憩いの空間として街に来訪者を呼び込み街の賑わい活性化につながります。また、それに関係する住民や関係者が一緒になって活動することで地域住民間のコミュニティの形成を促進します。そして、地域への愛着と親しみ、誇りと自信が育まれて「まちおこし」や「まちづくり」につながることと信じます。私達は、この緑化活動がモデル事業となって、まち全体の面的発展へと拡がり、「暑いぞ熊谷」から、「緑の風吹くまち熊谷」になってくれることを願っています。 

新緑が芽吹く頃、地域委員会の作品を眺めながら星川散策はいかがでしょうか。



             熊谷部会長/地域副委員長 今 宗子
























景観提案事業「緑の風吹くまちづくり」は
『第3回埼玉県建築文化賞 まちづくり部門』の
最優秀賞を受賞いたしました。








平成25年度 



 埼玉県の補助事業として建築士会大里支部が認定を受け、
地域委員会で取り組みました平成25年度地域緑化活動についてご報告いたします。

 実施場所は星川通り商店街で、当地は熊谷市の中心市街地でその中を流れる星川は両岸の植栽等整備等も進んでおり、地域コミュニティーの中心でもあります。

 デザインコンセプトは「地域の民地緑化を通じ緑の力を生かしたクールスポットの構築と地域コミュニティーのより一層の向上を図る」とし、星川中央親交会様等を通じ本事業に参加いただける方を募り、結果、 7名の皆様+お地蔵様 の民地緑化事業を行いました。

 委員会内で応募者様毎に担当を決め植栽デザインの提案から工事完了までを担当しました。また、植栽デザインの共通化を図るため委員会内で検討を重ね、全ての物件での共通デザインを決定いたしました。

 その後、施主様と個別の打合せに入りましたが、当初は希望条件、打合せ日程等々に付き、やや一方的にサービスの供与を受けらる的な思い込があり、建築士会の我々は皆が地域貢献のボランティア活動で有る事をご説明し、一層の相互協力をお願した所もありました。地域貢献の難しさも体験しましたが以後十分なご理解を賜り、各担当者毎、相当回数の植栽デザインプランの打合せを重ねた末、施主様承認に至りました。

 年度内工事完了に向け工事着手致しましたが、未曽有の大雪により工事工程に影響を受けましたが、工事施行者の大変なご努力に依り年度内に工事完了することが出来ました。

 工事完了後施主様より、お客様やご近所の評判も良く満足しておりますとの評価を得、建築士会の一員として少なりとも地域貢献に寄与出来た事を感じました。

 最後に埼玉県担当課様、熊谷市担当課様におかれては様々なご指導賜り感謝申し上げます。施工担当の(有)白根工務店様、森緑園様、並びに行政との協議、折衝、予算書策定等々に格別なるご尽力をされた松本副支部長さん、今(前委員長)さん、大変お疲れ様でした。

 尚、地域委員会では平成26年度も星川沿いの地域緑化事業に取り組んでおります。



                         地域副委員長 岡 博明









 



















平成24年度 



 24年度も地域委員会は「緑の風吹くまちづくり」事業を柱として、緑陰・緑風を増やしていこうと考えています。

 昨年度末には、県みどり再生課(現:みどり自然課)からの要請で、熊谷県地方庁舎前の空間について緑化提案しました。建築士会では植栽提案とパーゴラをデザインし、埼玉県立熊谷工業高校の生徒さんにご協力いただき設置いたしました。

 6月には、熊谷ロータリークラブ60周年記念事業として資金援助をいただき、星川の神輿橋のパーゴラを設計し、設置しました。足元に数種類のつる性植物を植え、商店の方に手をかけて頂き、緑で覆われつつあります。

 また24年度は、県みどり自然課「わが街緑化事業」に採択され、年度末までには、星川中央親交会の皆様のご協力を得て、ますます緑陰が増えることと思います。

 地域委員会ではクールシェア事業にも協力しています。暑い熊谷に緑陰というクールスポットを造り、そこに集まることでコミュニティが育まれるまちづくりに貢献していきたいと思います。


                         地域委員長 今 宗子

神輿橋

 
神輿橋 パーゴラ






 熊谷地方庁舎


   
           施工前                     施工後                      デザイン画

              施工前                     施工後                       デザイン画
パーゴラ




エントランス






平成23年度 

第1回 「暑さのしくみ 緑の力の気づき」 体感セミナー
平成23年6月11日
緑化センター

 まずは、体感温度と実際の気温は、同じではないことを体感しました。同じ室内で金属に触っている時と布地を触っている時では温かさが違います。表面温度が同じものでも熱の移動が速いものは冷たく感じられるのです。

 また、温度差が生じると熱伝導や放射熱のような熱の移動が生じます。同じ室温でも日向の部屋は暑く、日蔭の部屋は涼しく感じるように体感温度は周囲の温度に影響を受けるのです。取り組まれている方も多い「緑のカーテン」は常に葉から蒸散されているので、「自然に打ち水をしているすだれ」といえます。

 昔からの屋敷林のように家の北側に植栽することで、冬は「からっ風」を防ぐことができますし、開口部から外への放射熱も防ぎます。夏は涼しい風が温度差により南へと対流し風が生まれます。南側には落葉樹を用い暑い日差しを遮ります。まずは、自分のために始める。そしてその効果が感じられるようになれば、やがて地域へと広がっていくのです。そのためにこの緑の効果を、広く長く伝え続けなければいけないと感じました。

 
甲斐哲郎 講師   正木 覚 講師




セミナー参加の皆さん


第2回 「モデル地区の緑化について」ワークショップ
平成23年6月26日
緑化センター

 今回は、「まちなか緑化」を実際に熊谷のまちでできないかと考え、地域委員会から3つの地域の方々にご協力をお願いいたしました。

 一つ目の地域は、鎌倉町通り(17号から秩父線までの区間)地域です。ここは星渓園や石上寺など歴史的建造物もあり、古くから賑わってきました。「ナイトバザール」は約20年も続き、コミュニティーもあります。店舗数は少なくなりましたが、緑化する店舗や魅惑的な路地がありますし、また野菜の直売所ができたりなどまだまだ将来有望な商店街です。
 ワークショップでは、星川を星渓園に繋げる案や、商店街から外れた場所からしか入れない星渓園に鎌倉町通りから入れるようにすることで、星川から石上寺の山門へと緑をつなげ歴史の街へと招きいれるアイディアが出されました。それにより、買い物だけでなく憩いにくることもできるようになるかもしれません。

 二つ目の地域は、川沿い(保健センターから中央公園までの用水路が流れる区域)地域です。ここは、用水路が流れるこのまちの環境を見直すことをきっかけに、年1回有志が絵画や彫刻などを川に展示し、地域の人々の交流を図っている地域です。古い家屋が多く残り、緩やかな川が流れ静かで落ち着いた住宅地です。緑も多く懐かしさを感じられる魅力あるまちです。
 ワークショップでは、川を利用しての水力発電や蛍が戻るような環境づくり案、緑を生かしたフェンスや作品展の際の休憩場所について緑化の案がありました。しかし、都市型緑化はこの地域には必要ないこと、野に咲く草花も愛しく感じるあたたかく懐かしい地域であり続けることの大切さに気づいたものとなりました。

 三つ目の地域は、星川通り(駅前からお祭り広場までの区間)地域です。ここは熊谷の中心部でもありますし、商業的にも重要な位置にあります。商店街の歴史も古く、パブリックスペースも充実し、情緒あふれる橋や藤棚、彫刻など街づくりには行政も民間も大変努力をされている地域です。
 ワークショップでは、歴史を生かしたイベント会場とする案や、緑を使って木陰を作ったり星川をきれいにすることで人との繋がりをつくる。また熊谷のクールスポットにすることが話し合われました。その他季節ごとの花が咲く通りになればとの案もありました。星川を歩くことで季節の栞を見ることができるかもしれません。

 四つ目として「熊谷ビジョン」チームを設け、将来の緑化についても考えました。熊谷駅を中心としたエリアを対象に見てみると、街路樹は確かに緑化が進み景観が豊かになっています。市役所通りの美しい欅並木や寺社には緑は多いのですが、広がりが乏しく緑を繋げることが重要であると考えました。駐車場や空き地、ブロック塀や余地のない商店の店先などに緑化ができれば、暑さや景観もずっと良くなるでしょう。
 ワークショップでは、緑から発する「豊かさ」「楽しさ」「五感にうったえる」ことが緑化を拡げていくことではないかと意見がまとまりました。そこで、現在緑の途切れている場所にハーブを植えるという案や、トピアリー(樹枝を動物などの形に刈り込んだもの)を商店やパブリックスペースに植える案が出されました。この案は他の3地域でも生かすことができると考えました。ハーブは生活にも利用できますし、トピアリーは涼しさだけでなく楽しむこともできるのです。

 今回、モデル地区を歩いて観てまわりました。春でしたが、暑かったのを覚えています。各地区をまわるごとに涼しくホッとできるところがありました。長く住んでいるのに街の中に川が流れているという恵まれた環境や、緑の多い場所に今更気づくなんて。時には「よそ者」の眼で見ることは大切だと感じました。


鎌倉町通りチーム




川沿いチーム




星川通りチーム




熊谷ビジョンチーム





第3回 「モデル地区の緑化計画」プレゼンテーション
平成23年7月16日
緑化センター

 前回の3つの地域と1つのチームがワークショップをした結果を、プレゼンテーションし、どの地域に実際に緑化ができるか、参加者全員で投票をいたしました。各地域とも広く知っていただけるよう応援団を呼び、大勢の参加をいただきました。

「熊谷ビジョン」チーム “ハーブでハートのまちづくり”

 
 どこの地域でも協力できることとして、トピアリーを利用して植物で動物園をしたら面白い。

 参道や駐車場への植樹、ハーブをプランターに植え緑の途切れた場所に置く。
 

川沿い地域 “あたたかいふるさとの散歩道”

 
 地域を見直す作品展にも生かせるように、現在ブロック塀を取り壊したところがあるのでそこに植樹し、緑をつなげたい。

 橋の上の緑化や、使われていない官地にポケットパークができたら、地域の憩いの場として利用できるのではないか。また民地にもポケットパークができ、蛍が舞うような環境に戻れるようにしたい。
 

星川通り “清流と花と緑の散歩道”

 
 地域でビジョンを共有し、駐車場や商店の緑化だけでなく、星川にも緑のゲートができるようにするのはどうか。
 
熊谷の涼しさが星川から始まるようにアピールするのはどうか。

 季節を感じられるような花を植えたい。

 

鎌倉町通り “いざ!鎌倉街道 商店街”

 
 地元のまとまりがあるので少しずつ始められることが必要。

 ヒューム管を子供たちがペイントしたものに植樹をし、それを各店舗に置く。

 参道を緑のゲートとすることや、子供たちが遊べるすべり台を併設したポケットパークを将来設けられたら良いのではないか。

 
審査員コメント

建築士会大里支部長 加賀さん
「仕事柄、アイディアのおもしろいところを選びました。」

環境政策課課長 戸森さん
「実現可能なところに投票いたしました。」

商工会議所会頭 木島さん
「自分が今まで力を入れてきた場所に投票しました。」

デザイナー 正木さん
「創造性、オリジナリティー、地域性、ローカリティー、具体性、実現性があるかを考えることによって、どの地域からスタートすれば良いかが見えてくるのではないか。」

総評

甲斐さん
「補助がなくてもやるところがあれば、資金不足の地域、マンパワー不足の地域と各地域で現在のステージが違うと思う。しかし、地域性を生かした暑い熊谷発のプロダクトとして「クール式産業つくり」も発信できるのではないか。
 今回は、実現性が高い地域として星川通りと川沿い地域に植樹をしていったらどうか。その中から鎌倉町通りで取り組めるものを、取り入れればよいと思います。」

 
 こうして、モデル地区が決まりました。植樹は10月の予定です。どのような緑の風が吹くでしょうか?ぜひお楽しみに!

 最後に、緑は手間がかかります。剪定や落ち葉やら虫やらと隣近所にも影響します。しかし、そこで隣人にひと声かけることで地域の関係は生まれ、助け合いやコミュニティーに発展していくのではないでしょうか。人は緑によって安らぎを感じたり、癒されたりするものですが、人との関係によっても同じものを得られると思います。それはこの震災が教えてくれたことでもあるけれど。


植 栽
           ~ 思いをカタチに ~


 みどりの風吹く街づくり事業は、6月に体感講演のステップ1から、自分の快適生活を考えるステップ2、自分の思いと地域を繋げたステップ3までステージを上げてきました。

 今回はステップ4となる、「思いをカタチにする」作業を行いました。



 11月に植栽を行った川沿い地域のこのお宅には、隣家の眼隠しにもなる樹を植えていただき、ウッドデッキも施工させていただきました。川に背を向けブロック塀で囲まれていた敷地が、川からからみても一枚の絵になるようデッキと木を配置しています。しかしそれは造られた庭でなく、素朴な森をイメージしています。

 この地域で年1回行われる「川沿い作品展」では将来木陰の休憩所になり、また作品そのものになることが今から大変楽しみです。そしてそれがステップ5の地域コミュニティ形成へとつながっていくと確信しています。



 1月に入り、星川通りの有志のご協力で植栽を行いました。

 星川通りに面している3軒は壁面を緑で飾れるように、つる性の植物も植樹いたしました。春から秋にはきれいな花が咲き、新緑から夏の時期には涼しい風が吹くことでしょう。

 もう1軒は寂しい駐車場に植物を配置しました。車の出入りや排気ガスにも負けないもの、道行く人が楽しめて次の緑へとつながっていくものを考え「手間がかからないこと」「あまり大きくならないこと」などに配慮しました。

 街の中心地で、お祭りでも多くの人が集まる地域。この四季によって顔が変わる壁面緑化と駐車場の植樹がステップ5の地域の活性化・コミュニティにつながることでしょう。



 最後に、このプログラムには終わりがありません。今回の緑化によって涼しさ・快適さを経験した人がまたつながってゆくのです。そして緑の先にある人とのつながりのあたたかさにも気づいていけることでしょう…。
地域委員長 今 宗子



    川沿い地域イメージ   「デザイン画 : 正木 覚」

「川沿い地域」


施工前


施工後



「星川通り」


壁面緑化


つる性植物


施工中


施工後


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